ごあいさつ

理事長 沢田康次

理事長 沢田康次

東北地方は、従来からも地域の興隆のため、もろもろの努力がなされてきました。20年ほど前に生まれました『東北インテリジェント・コスモス構想』は、他地域に先んじた未来志向の構想で、当時の私の心に刻まれました。 2002年、その構想に関連したプロジェクトのひとつとして、『第1期仙台知的クラスター』がインテリジェント・コスモス研究機構を中核機関として始まり、私は5年間の研究統括をつとめました。ここではいろいろ学ぶところが多かったのですが、結果はなかなか厳しいものであったことは皆様ご存知の通りです。

2011年の大災害によって、世の中は大きく変わり、従来の延長線上では先が見えなくなりました。震災後、学術機関においても、各組織や研究者個人がそれぞれ復興支援を行ってきました。私も文部省補助事業『復興大学』を立ち上げ、復興人材育成と被災中小企業の支援を行う中で、いろいろなことを学びました。はっきりしていることは、復興を長期的に見た場合、一番必要なことは人口の流出と人口の流入のバランスが実現できるかどうかにかかっています。そのためには、東北地方に適したイノベーションの創出に加えて、東北地方の文化の発信だと確信しました。ヒトの流れは、文化の中心に向かいます。

わが国には、大きく分けて三つの文化があると考えています。東京中心の経済文化、京都・金沢中心の伝統文化、そして、東北の自然共生文化です。帝国大学の設立過程を見てもその流れが見えます。この三つの文化の中で、将来の日本の針路にとって、とりわけ重要なのは東北の文化です。東北地方には、200年以上前に既に6次産業を実行して藩の財政を立て直し、政治のあるべき道を示した上杉鷹山、慶長三陸大震災(1611年)のわずか2年後に遣欧使節団を派遣した伊達政宗、また、冷害と戦いながら土地の改良と農民芸術に心血を注いだ宮沢賢治など、他地域には見られない傑出したリーダーが、数多く存在します。と同時に、縄文時代から自然と調和して生きる文化を大切にしてきました。

東北文化は精神性の深さでは随一です。そのため、内向的で自らを語りたがらない特徴があります。しかし、東北地方の将来にむけて人口流出と人口流入へのバランスを実現するため、東北地方が一丸となって、イノベーションの幅を広げ、東北固有の文化を全国に強く発信することが必要です。そのことこそ『東北インテリジェント・コスモス構想』が目指すものではないでしょうか。

この度、図らずも本財団の理事長に就任することになりましたが、本財団の活動が、そのための学術的支援としてお役に立てることを願って、私のご挨拶といたします。